パテントトロール(特許の怪物)の特許訴訟にどう立ち向かうか?
2016/12/20
ども~月光っす。
今回はものづくり最大のアウトプット特許に関する記事を紹介します。
パテントトロールってご存知ですか?
直訳すると『特許の怪物』ですが、メーカーにとっては正に怪物なんですよ。
簡単に言うと「膨大な特許を盾に特許侵害してそうなメーカーや関連会社を訴訟しまくる組織」のことです。特許ヤクザと呼ぶ人も居ます。
「きちんとした特許を持っていれば特許侵害で訴えられる事なんてないんじゃない?」と正論かます方もいらっしゃるかと思いますがそう単純ではないのが特許です。
でも対抗手段が無いわけではない様です。
記事を読んでよく理解しておく必要があります。
以下記事要約になります。
弁護士矢倉千栄氏―「特許の怪物」に共同戦線、企業連携で訴訟費減らし「無効手続き」
2016/12/20 日経産業新聞
新しい技術が開発されるなか、買い集めた特許を使って金銭を得る「パテントトロール(特許の怪物)」が急増している。
パテントトロールによる訴訟件数が急増した米国では、米連邦取引委員会(FTC)も分析リポートを出すなど問題への危機感は強い。
パテントトロールの現状と日本企業の対策を伊藤見富法律事務所・モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所の矢倉千栄弁護士に聞いた。
――パテントトロールの定義とは。
「パテントトロールはパテント・アサーション・エンティティー(PAE)が公式な名称とされ、第三者から特許を取得し、権利行使して金銭を得ることを指す。
通常、企業は物を作って売るといったプロセスで金銭を得るが、PAEは特許を使って訴訟を提起し、和解金などを求める。製造や販売の実態はない」
――どのような種類に分けられますか。
「米国では調査対象としたPAEの会社はおよそ350社にのぼる。主にPAEは2種類あり、ポートフォリオPAEと訴訟PAEに区分できる」
「ポートフォリオPAEは、特許を数百から数千種類買い集め、PAEが『これはいける』と思う特許を10~20個使って企業に特許侵害の訴訟をめぐる交渉を持ちかける。訴えられた側の企業は10~20個の特許を審査し、特許侵害していないと述べる。だが、PAE側がもつ特許の数が膨大で対抗するには大変な手間がかかる。侵害していないと言えば、PAEが別の特許を切り出す。PAE全体のうち会社数はわずかだが、パテントトロールが得る収入のうち8割を占め、約3200億円にのぼる」
「訴訟PAEは特許の数は10~20個程度とわずかだが、とにかく早い段階の和解を要求する。大半の和解金は3千万円以下で、訴訟費用より安いと応じてしまう企業も一部ではいる」
「FTCが提示した改善点は主に3つある。1つは費用の軽減だ。訴えられた企業側は特許を意図的に侵害したのではないということを証明するために製造開発、財務情報に関わる膨大な情報を提供しなければならない。こうした費用に数千万円から数億円かかるため、訴えられた企業の訴訟費用を軽減できるよう、一定のところでない限り、こうした情報を集めなくていいとしている」
「2つ目はPAEが訴訟を起こした場合、製品を開発した企業だけに絞ることだ。仮に銀行や小売りなどの製品を利用するエンドユーザーを訴訟の対象とすれば、訴えられる側は膨大になってしまう。
3つ目はPAEに背後にどんな企業がいるのか、株主などの情報を開示させることだ。そうすればPAEの実態がより理解しやすくなる」
――ユニークな技術を持つ日本企業にとっても人ごとではありません。
「日本では明確にパテントトロールを防ぐ法律がある訳ではない。標準的な技術については使用をやめるよう請求があっても差し止め請求できないといった事例はあった。ただ、この事例は製造販売メーカー同士の特許訴訟で、PAEの問題とは異なる」
「訴訟が面倒だからといって安易に和解金を払わないことも重要だ。米国も訴訟に必要な情報を集めるより、和解金のほうが安いこともある。『とにかく訴訟を起こせば得』だと考えているPAEの思うつぼとなり、他のPAEからも狙われかねないからだ」
――対抗する手段は。
「複数の会社に訴訟を仕掛けるのがパテントトロールの常とう手段だ。PAEが訴えた特許を無効にする『特許無効手続き』の制度があるので、複数社で協力してPAEに共同戦線を張って戦う姿勢を示すことだ。
パテントトロールを白日の下にさらし、1社の訴訟費用の負担も軽減できる。訴えられた企業にとっては一つのいい手段と言えるだろう」