「PSVR」値ごろ感前面、10月発売、399ドルで普及狙う。
2016/07/25
2016/03/17 日経産業新聞より
『ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は16日、仮想現実(VR)システム「プレイステーション(PS) VR」を10月に日米欧、アジアでそれぞれ発売すると発表した。希望小売価格は399ドル(4万4980円)と値ごろ感のある価格に設定した。ソフトウエアメーカーも230社以上が参画する。ゲームを軸にVR市場の土台を一気に築く。
SCEがPS VR発表の晴れの舞台に選んだのは、世界のゲーム開発者が集う交流イベント「GDC」だった。14年に初めてPS VRのコンセプトを披露したのも同じGDCだ。未開のVR市場を切り開くため、ソフトやミドルウエアの開発者たちと二人三脚で歩むという強い意志を改めて示した格好だ。
価格は399ドルとライバルの米フェイスブック傘下のオキュラスVRの「オキュラス・リフト」(599ドル)や台湾のHTCの「ヴァイブ」(799ドル)に比べ、競争力のある値付けにした。399ドルという価格は、歴代PSの販売動向からSCEが割り出したゲーム機普及の「スイートスポット」の価格帯だ。
SCEはPS VRの当初の売り出し価格をスイートスポットに合わせた。つまり、市場を段階的に広げていくよりもむしろ、スタートダッシュをかけて一気にVR市場の主導権を握る構えだ。
世界累計販売台数が約3600万台(1月時点)の「PS4」の地盤を生かしてゲーム中心にVR市場の「面」を広げていく手法は、普及戦略では定石通りだ。
ただ、VR市場を巡って最大のライバルになる見通しのオキュラスVRは、VRを「次世代メディアのプラットフォーム(基盤)」と位置付け、ゲームだけでなく音楽やスポーツなど多面的に攻める姿勢を鮮明にしている。端末の種類でもパソコン向けだけでなく、モバイル端末向けでは韓国サムスン電子と組みVR端末を商品化している。
VRは様々な領域で消費者の体験を変える可能性を秘めた技術だ。VRの未来を描き、そこから逆算して戦略を組むことが重要となる。今後、定石がないVR市場でSCEがどのように世界観を構築するかが注目される。』
◎コメント
ソニー久々の新ハード「PSVR」がついに正式発表された。PSVRの肝となるのはヘッドマウントディスプレイ(HMD)であることは言うまでもない。これはPSVRというゲームを盾にHMD普及を目論むソニーの戦略だ。HMDに搭載されるデバイスを製造するメーカーはその先を見据えて動かねばならない。ソニーのライバルとなるのは米オキュラスや台湾HTCであり、他のデバイス同様世界規模の競争が予想される。ここで日本のものづくりの力を見せつけ、再興の足がかりとしてほしいものである。HMDの特徴である視野角の広さを生かした”バーチャルリアリティ”の成果を存分に味わって”リアル”な過当競争に勝利したいものである。